「あなたの苦しみは、わたしは、身をもって理解しています。痛いほどわかります」

内モンゴル東部ホルチン地方のシャマンは、よく、シャマンになるまでの苦しい経験を次のように表現します。「死以外のものをほとんど経験しています」「死んで蘇りました」。シャマンは、傷を負った治療者です。守護霊にシャマンになるよう選ばれ、それが、シャマン病として現れ、心身ともに様々な苦しみを経験します。それによって、人間の悩み、痛み、苦しみ、不幸を身をもってわかるようになります。そして、相談者に全身全霊を込めて対応します。
ホルチン地方では、良く次のようなエピソードが語られてきました。


かつて、シャマンが剣で自分の体を刺して、脂肪を取り出して、火に燃やしたそうです。このようにするのは、1つは、能力の誇示であり、もう1つは、悪霊を追払うなど病気治療のためです。ホルチン地方で、現在も、このように体を剣で刺して見せるシャマンが存在しています。類似の伝承がシベリアにも見られます。
古代の岩絵にもシャマンがわれとわが身を痛めつけている現象が見られ、また、インド(タイプーサム儀式)が発祥と言われる、インド、タイ、シンガポールに見られる「心の平穏と健康を導く串刺し儀式」が連想させられます。
https://www.vice.com/…/dpkx5kphotos-from-thailands-brutal-t…
http://www.junmas.com/cl…/happening/thaipusam/thaipusam.html
次の絵は、18世紀の版画で、矢で自分の体を貫くツングース族のシャマンです。出典は、『シャーニズム 地の再発見双書 162』(創元社)、PP.47。デヴィッド・ルイス=ウィリアムズ (著), 港 千尋 (翻訳)2012『洞窟のなかの心』講談社を参照。
心の平穏と健康を導く串刺し儀式
毎年、東南アジア全域で、陰暦9月に開催される九皇大帝祭は、道教の教えに基づく9日間の祭祀だ。タイのプーケットでは、〈テサガン・キンジェー〉もしくは〈菜食週間〉として尊ばれている。
vice.com


なお、シャマンのシャマンになる過程(不思議な体験を含む)を詳しくお知りになりたい方は、サランゴワ著2019『ブォ・シャマニズムの現在―内モンゴル・ホルチン地方の新地平』(牧歌舎)の成巫過程をご覧くださいませ。本書のシャマンのライフヒストリーと治療にもよく登場します。また、書籍のお買い求めは、ブッククラブ回のオンラインショップからどうぞ。
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